映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を見てきました。申し訳なさたっぷりの久々の更新なのですが、とりあえずここから数回に分けてこの映画の感想を書いていきます。

結論としては自分はかなり好きなタイプの映画で、絶妙な描写不足感、伏線の貼り方、余韻を残すような終わり方など、総合的に見て非常に良かったと思います。逆に言えばわかりにくい感じもあるし、声優でなく俳優をメインに使っていることから、演技力の面で若干勿体ないなと思った部分もなくはないですが、それを込みにしても見に行って良かったなと思います。

それを踏まえた上で、今回はじゃあ実際に作中で何が起こっていたのか?というのを自分なりに書いてみます。ネットの感想などはまだ全然読んでないので的外れなことを言っている可能性はありますが。

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トップ絵を適当に拾ってきました。原作を知らなかったので、映画を見終わってから改めてこのイラストを見ると中々に来るものがあります。一応公式サイトにリンクしています。


花火の玉が映し出す、もしもの世界

なずなが拾った不思議な玉を投げることで、主人公は「もしも~」と願った先の世界に飛ぶことができる。正確には過去に戻って同じ状況をやり直せるということになります。ちなみに自分の見間違いじゃなければなんですが、この花火の玉は駆け落ちでやってきたなずなの実の父親が死んだ時に手に持っていたやつですよね?娘が拾い、娘を巻き込むような形で主人公が使い始めるとは不思議な縁もあるものです。

映画を見ている最中には、「主人公が事あるごとに過去に戻って現実を書き換えているのではないか?」と思ったのですが、終わってから考えるとどうもそんな感じでもないような気がしてきました。

・もしもの世界というのは複数用意されていて、投げた人が願った世界に飛べる
・投げた人が願った世界が「もしもの世界」として構築されていき、それが花火の玉の中に記憶として残る


パッと考えられる仮説としてはこんなもんですかね。もし既に解決してる内容だったら恥ずかしいですけど……。

主人公が書き換えようとした世界は3度あります。1度目はなずなが裕一に告白した時、2度目はなずなが電車に乗る前に両親に連れていかれた時、そして3度目が灯台の上から落ちた時。

いずれの場合も花火が変わった形をしていたのが印象的でした。1度目は横向きの花火で、これはどこから見ても横向きなんだろうなあとか思ったり。2度目の花火はちょっとメルヘンチックで面白かったです。

ちなみにこの2度目の花火の時に「こんな世界でも~」みたいな台詞でなずなが今だけは一緒にいたいということを言葉で表現したシーンが非常に印象的なのですが、それはまた後日の記事で語ろうと思います。

でももしもの世界だろうが、周囲の人間はちゃんといて、ちゃんと皆自分の意志で動いている。要は主人公自身が願った要素だけ都合よく書き換えられている感じで、なんかちょっと変な世界ではあるけれども、実際には現実と大して変わりはない。そんな中で、最後の打ち上げ花火として、あの不思議な玉が打ち上げられるところがラストシーンへと繋がっていきます。


ラストシーンについて

打ち上げられた不思議な玉が映し出すのは、それぞれのキャラクターたちが望んだifの世界です(実際、ifという文字が光った時の不思議な玉の中に刻まれているのが分かります)。もしかすると望んだ世界ではなく、並行世界のようなものなのかもしれませんが、それは映画を見ただけではよく分からなかったです。そこで各々が吹っ切れたようにその世界を見ながら叫びだしたりするシーンは非常に印象的です。

おそらくは「こうあってほしかった」という今まで自分たちがしてきた妄想だけではなく、それぞれのキャラクターが「こんな未来もあったんだ」という自分の新しい可能性を信じることができたからではないでしょうか。

特に祐一なんかは告白されてもうやむやにしてしまう未来もあったし、実際目の前でなずなを取られてしまう展開があったので、彼にとってみれば、なずなに対してかなりプラスに考えられるきっかけになったのかもしれません。

これに乗っかる形で、なずなや主人公も映し出されたifの世界を見ます。このシーンは本当に素晴らしくて、欠片の中で見た「自分となずながキスするシーン」が、海に飛び込んでキスしに行くことで現実になるんですね。この時に上がった花火を主人公が指摘することはありませんでした(指摘する余裕がなかったか、もしくは花火が本物だったか。自分は後者を推していきたいです)。

ifで願い続けた果てに、打ちあがった例の不思議な玉によって、なずなと(一時的であれ)結ばれるという奇跡が起きた、というのが素晴らしいところです。エピローグではキッチリなずなが教室から姿を消してるので、欠片に映っていた東京で遊んだ未来なんかは流石に現実にはならなかったのですが、お互いに好き合ってキスをしたというひと夏のささやかな思い出として、2人の心の中に刻まれていきます。

最後に主人公が教室にいなかった件については、自分も上手くまとまっていないのですが、駆け落ちした線は正直考えづらいです。なずなは「1日だけ」という部分を強調していたし、もしもその奇跡によって恋が結ばれた物語を描くなら、わざわざあんなに遠回しにする必要はないと思うので。

それにしても、ここで海の中の2人は打ち上げ花火を下から見上げるわけですが、花火が2人を祝福してくれているように見えるのも良い演出ですよね。横から見たらどうなるんだ?という話題は延々と出てきましたが、下から見ると?という話題は出てこなかったように思います。まあ下から見るのが当たり前と言えばそうなので、このあたりは何とも言えないところではあります。

この海の中から見上げる花火は誰が打ち上げたものなのかも少しだけ気になります。あの酔った花火師が打ち上げたのか、それとも「海の中の2人だけが見た幻覚だった」とかそういう解釈も面白そうだし、たまたま別の場所で打ちあがったものが見えたとかでも面白そうだし、まあ真相がなんだろうとロマンチックならどうでもいいということなのですが。


まとめ

映画のあらすじを追いながらの雑感みたいになりましたが、割とポンポン言葉が出てくるような作品だったので、やっぱり語りたいことはまだまだ沢山ある気がします。中学1年生のリアリティとか、なずなちゃんの心の内が読めない言動の数々とか。

あとはラストがかなり曖昧だったり、そもそも原作を知らないという前提だったり、考察という意味でもかなり詰める余地はあるんですよね。かと言って今から他のコンテンツを追うかと言われたら微妙ですが。この映画以外の予備知識がある人は別の解釈をしてそうだなとか考えると、それもまた面白いことだなあと感じます。