これは自分の拘りというかそういう話なんですけど、瀧くんはやっぱり瀧くんで、三葉はやっぱり三葉なんですよね。三葉は瀧くんのことを瀧くんと呼ぶし逆も然りだからなのかな。瀧って呼び捨てるのもしっくりこないし三葉ちゃんって言うのも違和感を覚えてしまう。つまりはそういうことです。

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画像は公式サイトから。この「いかにもお似合いの約束されたカップル感」は一体どこから出てくるのか。


正直三葉と瀧くんの話は沢山の方が特に触れたがる部分だと思うので、自分からは出来るだけ独特の視点を持てたらいいなと。というわけで2人の好きになった場所ときっかけについて考えてみます。

シーンで言うなら前前前世が流れている間に2人は恋に落ちて、終わる頃には既にある程度互いを好き合っているわけですが、この2人の恋愛のポイントは、「お互いに好き合っているのに会ったことがないこと」「お互いの姿を知っていること」「入れ替わったお互いでも迷わず好きだと言えること」 独特の恋愛観を語るなら、この3点は欠かせないと思います。順番に書いていきます。


①お互いに好き合っているのに会ったことがない

本編で2人が出会えたのは、
1回目:3年前に三葉が東京に来た時(瀧くんは三葉のことを知らないのですれ違い)
2回目:かたわれ時の奇跡(一瞬の幸福)
3回目:ラストシーン(運命の再会)

少なくとも2人が好きになるまでに、出会って色々話したから好きになったということはなくて、かたわれ時の奇跡で出会うまでに2人は間違いなく恋に落ちています。このSF交じりの恋愛観が理解するのが難しいけど、少なくともこの条件でこれだけお互いを求め合えるというのは羨ましく感じる人も多いんじゃないでしょうか。

でも会えた時の2人って、(最初の時の瀧くん以外は)本当に幸せそうな表情してますよね。現実を受け入れられないような、でも確かにそこにある幸せを一秒一秒噛みしめてるような。あの表情を見てるだけで泣きそうになります。何気ないやりとりでさえも恋愛の集大成のような感じがしてきます。


②会ったことないのにお互いの姿は知っている

入れ替わり特有のアレです。憧れのあの人の中身に出会ったことはないのに、どんな肉体に入っているかだけを知っている。けど2人は全然欲望というものがないから、あんまり身体を求めたりってことはしないんですよね。瀧くんも男の子なのにそこは冷静で本当に良くできた主人公です。

判断が難しいんですけど、少なくともこれで、会ったことがないのに相手の見た目だけは馴染みがあり過ぎるという状況が発生します。良く言えば友人だとかもう一人の自分のような安心感というか。いざお互いの姿を客観的に見てみた時に、まるでもう一人の分かり合える自分がそこにいるような感覚がするんじゃないかとか。


③入れ替わったお互いでも迷わず好きと言えること

かたわれ時で3年越しに見えないお互いを探し回る場面がありますが、このシーンでは三葉の心が瀧くんの身体に入っていて、逆に三葉の身体には瀧くんの心が入っています。もはや自分の姿なんて関係ないと言わんばかりにお互いを求め合う2人の姿があって、これこそがこの作品が生み出した恋愛のひとつの完成系なんじゃないかとか思ったりもします。

なんでこれが素晴らしいかって、お互いの心が惹かれ合っていて、見た目にはまるで興味がないというところです。この場合はお互いに馴染みのある自分の身体に入っているという特殊な状況ではあるけれども、お互いに見た目を求め合うということはまずしていない。心だけが確かに惹かれ合ってて、心だけでお互いに忘れないように繋がっているというところが、自分にはどうしようもなく素晴らしく感じました。

恋愛は慣れてしまえば見た目は二の次なんて言うけど、この2人はそもそも最初から見た目なんて気にしてないんですよ。確かに三葉は可愛いし瀧くんはかっこいいけどね。入れ替わり現象だけを通して心で惹かれ合って出来上がった相思相愛なんて、もはや誰にも止められないくらい強いムスビつきなんじゃないでしょうか。

よく考えなくても映画って2時間しか無くて、その時間でお互いの時間の積み重ねを表現しなきゃいけないんですけど、このカップルだけは本当にスッと自分の中に入ってきて、お似合いだから絶対くっついてほしいとしか思えなくなってました。2人がどこまでも求め合う姿に心を打たれたのかもしれないけど、それにしたって瀧三カップルほど老後まで永遠に幸せな言い合いしてそうな組み合わせって探そうとしてもなかなか見つからなさそうです。


まとめ

名前を忘れてもどこか懐かしい記憶だけを頼りにお互いを探し回る。知らないはずの他人なのにひとたび目を合わせれば運命の人だとすぐに分かる。運命的な結びつきって不思議なもので、もしこんなロマンチックなムスビつきが実際にあるなら自分も出会ってみたいものです。現実はこんなに上手くいかないものなのかもしれないけど、現に多くの人を動かし続けている2人の物語って、まさに美しくもがくって言葉がぴったりです(野田洋次郎の言葉を勝手に借りました)。

特殊な状況に酔ってる吊り橋効果では流石にここまでのムスビつきは描けないだろうしそもそも起こらないでしょう。何か運命的なものが2人を結び付けてて、その上で2人は自分の意志で間違いなくお互いを好きになって、死に物狂いで愛する君を求め合う。何度回想しても美しいストーリーすぎる。ラストシーンの賛否両論はともかく、新海監督がある意味集大成と言ってる言葉の意味が漠然とですが分かるような気がしてきました。


「君の名は。」キャラクター感想
宮水三葉」「奥寺ミキ」「名取早耶香」(「雪野百香里」)