なんでこのタイミングで川井さんについて書くかというと、植野さんの次に今作で引っかかるキャラクターだったからなんですよね。将也と硝子について掘り下げたい気持ちも勿論あるんですが、川井さんはそれとは真逆に大衆心理を反映している気がするし、むしろこの作品で植野さんと川井さんをしっかり理解することは非常に大切なことなのではないかと思います。また今回も自分が映画しか見ていないので映画から読み取れる範囲ということで。

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画像は公式サイトから。いかにも真面目な生徒って感じの外見。メガネかけてたら完璧に委員長キャラだなあとか思ったけどこの思考が既にオタク臭いのでまあいいか。失礼ながら言うと川井みきって名前ですけど彼氏以外には絶対名字で呼ばれてそうですよね。そもそも彼氏はいるのか。


川井さんの中の正義

彼女の場合は「自分がやったかどうか」をとにかく重視します。具体的に言えば、彼女の中では将也や植野さんはれっきとした悪人であり、それを傍観していた自分は悪人ではない。ただ、彼女がそのいじめについてちゃんと注意したことはほとんどなくて、結局それを野放しにしてしまっていたということです。小学生の時も学級長だったので、尚更そうですよね。

そんな感じでヘラヘラ生きてるので、常にどっちつかずな印象があります。いじめるわけでもいじめられるわけでもなく、ただただその現場には全く干渉しない。学級長なのにお前はどっちなんだよっていうね。まあそれでも川井さんは平和に生きてるわけで、そう考えると無意識のうちにいじめる側にカウントされてしまっています。

硝子から見たらどうかと言えば、助けてくれない以上川井さんも同罪で、たとえ川井さん自身が全く関与していないと思っていても、被害者から見れば完全に加害者です。私はやってない!!って言い張ろうが無意識のうちに加担してしまっているのであり、行動を見せない限り傍観者という名の加害者で、硝子から見れば将也や植野さんと全く変わらないわけです。

でもこれが間違っているとは思いません。なぜなら硝子に近づいた佐原さんはそのまま教室に来なくなってしまったから。助けようと思っても、自分がいじめられる恐怖には勝てずに結局傍観してしまう。正義感とは別の恐怖が働いていて、結局加害者側として加担するしかない状況になっています。数人のいじめっ子に沢山の傍観者(同調者)が一般的ないじめの構図ですよね。

大きくなっても変わらない川井さん

彼女の性格の最大の特徴は「自分に不利になることはしない」「自分が見逃してもらえるなら他人さえも売る」です。作中でも将也が以前硝子をいじめていたことを自分はやってないと言うためだけに大声でばらしてしまうし、橋の上でみんながエゴをぶつけ合うシーンでも、私はやってない!!と言い張って泣き崩れてしまいます。彼女からしたら何もやってないつもりで、加えて自分がその対象になることを何よりも怖がっているんですよね。

彼女根は良い人なので、余計偽善者に見えます。自分に不利になることはしないけど、都合の良い時だけ硝子の見方をする変に意識の高い学級長みたいな。いじめっ子から転じて硝子と関わろうとした将也もそうですが、行動のひとつひとつが自己満足にさえ見えてきます。勿論本人にそんなつもりはないし、抱えているものもひとりひとり違います。

こういうタイプって、少なくとも自分の周りが同調してくれれば、本当に良い人になれるんですよね。ラストシーンでのみんなのやりとりを見ていれば分かります。周囲に怯えて自分の感情を隠してしまっているだけ。今まで友達だった人から些細なことをきっかけに見放されるのが何よりも怖い。結局は自分が可愛いだけなんて言われてましたがまさにそんな感じです。


声優さんの演技についてちょっとだけ触れておくと、いかにも真面目風お嬢様って印象が漂っていてよかったです。まさに自分が可愛いと思っていて自分が標的になるのが怖いような性格の。見た目と声から人を判断するのは失礼ですけど、成績も絶対良いだろうし体育は出来なさそうですよね。このチョイスは自分としてはかなり良かったなと思いました。


「聲の形」キャラクター感想
将也」「硝子」「結弦」「植野さん」「佐原さん」「永束くん